My徒然日記帳

スナップショットの感覚で世の中の事象をとらえ、浮かんだ考えを気ままに綴っていきます。

惑星ソラリス

私が知る中でSF映画の最高峰はというと間違いなくAタルコフスキーの『惑星ソラリス』です。1972年カンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞した不朽の名作。全編に流れるJSバッハのコーラル・プレリュードがとても印象的で、映画の物哀しさを引き立てています。(映画ではオルガン曲ですが、私はAブレンデルピアノ曲が好きです。PHILIPSから出ているイタリアン協奏曲に入っていますが、とても良いアルバムでおすすめです。)

眠くなるSF映画と言えば、Sキューブリック監督の『2001年宇宙の旅』が筆頭ですが、この『惑星ソラリス』の序盤も負けず劣らず睡魔との戦いです。最初の頃は1回も眠らずに最後まで観ることが不可能でした。特に(なんとソ連、いやロシア映画なのに)東京の首都高を延々と回り続けるシーンが有り、間違いなく熟睡できます。そのシーンさえ耐え抜けば...とはいかず、試練は続きます。惑星ソラリスを議論する会議。なぜソラリスから帰ってくる人間は皆、精神異常をきたすのか。録画ビデオにはソラリスの海を覆うただの霧状のモヤモヤしか写っていません。しかし、このモヤモヤこそがソラリスの正体だったのです。

前回、科学技術に対して批判めいた事を書きましたが、科学批判の最右翼がこの映画だと思います。科学の愚かさ、人間の思い上がりの虚しさを、これほど鮮明に描いた映画というのを他に見ることができません。昔の映画なので、特別な特撮テクニックも何も無いのですが、にもかかわらずにこれだけの映画を作りあげるタルコフスキーというのは正に天才です。素晴らしいSF映画の条件として、CGだとか特撮の凄さみたいなのが本当に意味が無いと思えてしまいます(2001年宇宙の旅とは真逆ですね)。そして恐らく原作があるんだと思いますが、読まない方が良いのだろうと思います。

数々の失敗事例を見た後、自分を強靭な精神力の持ち主だと自負する主人公の科学者がソラリスの謎を暴きに行くのですが、そこで彼は世にも恐ろしいものを見ます。そして科学者として客観的であろうとすればするほど人間性を捨てていかなければならないという葛藤の中で、屈辱に耐え切れず遂に彼は科学者である事を放棄します。しかしソラリスの海に屈した彼を待っていた結末とは...。

主人公の科学者同様、これを観たあなたも、恐らくこの映画を結論づける事が出来ないのではないかと思います。