My徒然日記帳

スナップショットの感覚で世の中の事象をとらえ、浮かんだ考えを気ままに綴っていきます。

大友克洋のSF漫画

映画『AKIRA』で一躍メジャー作家となった大友克洋さんですが、どちらかといえば短編SF漫画みたいなのを描くのがとても上手い人で、その昔幅をきかせていた漫画評論家と名乗る人達から随分と賞賛されていました。評論記事には大抵漫画の一コマが挿入されていて、その中で特に私が衝撃を受けたのが大友克洋さんの『FIRE BALL』でした。

FIRE BALLの表紙

当時はマイナーな雑誌のバックナンバーを探すのがとても困難で、あちこち探せどどこにも無くて途方に暮れていました。その後、国立国会図書館の存在を知り、そこでオリジナルの雑誌(アクション・デラックス1979年1月27号)を探し当て、コピーを入手することに成功しました。苦労したので、手にしたときの感動はひとしおでしたね。

AKIRA』はちょっとパイロット・フィルム的というか、『FIRE BALL』や『童夢』などの集大成的作品にしようとしてどっちつかずになってしまった感が有るので、どちらかといえば『FIRE BALL』の路線でリメイクしてほしかったなと思います。

 童夢

童夢』は超能力少女vs超能力爺さんという斬新な展開で、ショッキングな描写も多かったせいか、評論家の間ではかなりの話題作でした。大友克洋さんは執筆にムラがあるというか毎週連載みたいな感じでは無かったので、連載時は話が飛び飛びでうまくつながっていない感じでした。それが双葉社のコミック本として出た時に大幅な加筆をして、まとまりのある作品になったと記憶しています。そういう理由で加筆分の絵が違っていて、ここが加筆箇所だなというのがよくわかるところが面白いと思います。

 衝撃的なFIRE BALLのシーン

FIRE BALL』は童夢同様に超能力を扱っていますが、どちらかというとAiに支配された管理社会の恐怖を主題にした作品です。この題材はジョージ・オーウェルの『1984』が元祖で、映画『未来世紀ブラジル』なども有名ですが、どちらも自嘲的で欲求不満が残り、あまり好きになれませんでした。手塚治虫さんの『火の鳥・未来編』もお手本的な名作ですが、大友さんの『FIRE BALL』はレジスタンス活動であるとか、人体実験とかの反骨的で毒が有るところが魅力だと思います。難を言うと体制側の圧政の描写が足りないせいか、少し荒削りな感じが有って、もう少し描き込んでいたらと思う一方、下手に加筆せずにこのままが良いのかなとも思います。

その後『FIRE BALL』は、「彼女の想いで...」という講談社の短編集にやっと掲載されることになりました。「SOS大東京探検隊」というのも同時発売されていて、大友さんの短編SFを一気に読むことが出来ます。『危ない!生徒会長』とかの異色作もあって、色々と楽しめます。